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減塩コラム:塩分を「減らす」 その② | 千葉東病院 腎臓内科 川口 武彦先生
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減塩コラム

各先生に減塩に関するコラムを
執筆していただいています

塩分を「減らす」 その②

今回は塩分を「減らす」方法の2回目です。前回の1回目は「食べる時の工夫」についてでしたが、今回は「料理をする時の工夫」についてお話しします。塩分を減らすための料理の工夫には、以下の4つがあります。


  1. うま味を生かす
  2. 酸味を生かす
  3. 辛味を生かす
  4. 香りを生かす

  1. うま味を生かす
  2. 味覚には、甘味、塩味、うま味、苦味、酸味の5つがあります。舌で感じる美味しさは塩味だけで決まるものではありません。これらの味を組み合わせることで、塩味が薄くても美味しい料理が生まれます。この中でも「うま味」は日本人の食生活にかかせない「だし」の味で、成分としてはアミノ酸であるグルタミン酸や、核酸であるイノシン酸、グアニル酸が代表的なものです。日本のだしは、主に昆布と鰹節のうま味からなるもので、塩味が薄くても風味豊かになり、素材の持ち味も引き立ちます。「だし」というと和食を思い浮かべますが、フランス料理の「ブイヨン」「フォン」や中華料理の「タン(湯)」もうまみ成分を含む「だし」ですね。和食、洋食、中華に関わらず「だし」をうまく利用することで、美味しく減塩しましょう。最近は便利なことに粉末の「だし」も簡単に購入できます。ただし市販の粉末だしには塩分が含まれているものが多いので、塩分量を事前に確認しておいた方がいいですね(最近では減塩の粉末だしも販売されています!)。ちなみに「和風水だし」は自宅でも意外と簡単に作れますので、よければ一度お試し下さい。

    • 和風水だし(1時間以上つけておくだけで、だしが取れます!)
      昆布  5グラム
      鰹節 10グラム
      水  1リットル
    • ※昆布に含まれる塩分がうま味とともに抽出されるため、(昆布の種類や水につけておく時間によっても異なりますが)水だしには約0.1%の塩分(100ccあたり塩分0.1グラム)が含まれます。しかし、だしのうま味のおかげで塩分の総量を減らせれば、むしろ美味しく減塩ができます!

    だし



  3. 酸味を生かす
  4. 味覚のうち①で述べた「うま味」に加え「酸味」を利用すると、料理全体の味に深みを出す効果があります。酸味の成分として、レモンや柚子といった柑橘類に含まれるクエン酸や、食酢に含まれる酢酸が代表的ですが、ワインに含まれるコハク酸や酒石酸も酸味に含まれます。かくし味程度の酸味でも塩味を増強することも知られていますので、減塩効果にも効果的です。お好みに応じてレモン汁やお酢をうまく料理に活用しましょう。なお、柑橘果汁に酢を加えた「ポン酢」には塩分が含まれていないものが多い一方で、「ポン酢しょうゆ」や「すし酢」には通常は塩分が含まれていますので、こちらも使用する前に塩分量を確認しておきましょう。

    柑橘


  5. 辛味を生かす
  6. トウガラシやショウガ、コショウといった香辛料の刺激をうまく利用すると、塩味が薄くても料理を美味しくできます。辛味の成分としてトウガラシに含まれるカプサイシンは有名ですね。ちなみに「味覚には、甘味、塩味、うま味、苦味、酸味の5つがある」と上で述べましたが、「辛味」が入っていないことを不思議に思った方がいらっしゃるかもしれません。実は、辛味は味覚ではなく「痛覚」なんです!痛みなのに美味しさを構成する要素になっているとは本当に驚きですね。最近では、和食、洋食、中華だけでなく、エスニック料理でも用いられる香辛料も簡単に手に入り、好みに応じて楽しめるようになりました。一方で、市販の練りトウガラシやチリソース、練りショウガ、練りワサビには、塩分が含まれることが多いので、念のため事前に塩分量を確認しておきましょう。

    唐辛子


  7. 香りを生かす
  8. 料理の美味しさには、味だけでなく香りも重要です。料理の香りは食欲をそそりますよね。一方で、鼻づまりの時に香りを感じることができず、食事が美味しく感じられなかった経験はありませんか。人間の嗅覚は味覚に比べて極めて鋭敏であることが知られています。香りのある食材には、ネギ・ニンニク・しそといった香味野菜や、レモンのような柑橘類、コショウ等の香辛料がありますが、これらは上で述べた酸味や辛味にも共通する食材ですね。これらの食材を利用すると料理の味が引き締まります。また食材そのものの香りだけでなく、調理による香りも美味しさには欠かせません。例えば、お肉やお魚を焼くと、こんがりとした焼き色と香ばしい香りが生まれます。これはメイラード反応といって食材に含まれるアミノ酸と糖が反応して起こるものです。料理の味だけでなく香りも味方につけて、美味しい減塩を目指しましょう。

    しそ

以上いかがでしたか。減塩の考え方として、食べる時は塩分の「引き算」でしたが、料理をする時は、塩分以外で美味しさの「足し算」を意識することがポイントです。是非工夫してみて下さいね。次回3回目は、減塩を実践するにあたっての注意点について少しお話しします。