岩手県釜石市
減塩普及による脳卒中予防対策推進事業
岩手県では男女ともに都道府県別の脳血管疾患年齢調整死亡率がワースト2位である。釜石市の平成27年度最新値(人口10万対:56.2人)は県(人口10万対:39.6人)を上回っており、特に男性は高い状況。
減塩普及による脳卒中予防対策推進事業
平成27年度 脳血管疾患年齢調整死亡率について、当市は県に比べて高値であることから、脳血管疾患と塩分の関係に着目した。食塩摂取量に関しては、様々な生活習慣や環境が起因しており、効果ある減塩対策を進めるためには個人や各世帯の努力だけでは困難な状況である。
このことから、行政が主導し、減塩(適塩)に対する意識を積極的に啓発し、地域社会や社会全体を巻き込み、関係する事業者を含めた「減塩に向かう潮流」を作り出すことが重要となる。加えて、冬期間は寒暖差などの要因から、脳血管疾患に更なる注意が必要である。これらの状況を踏まえ、12月から3月までを「釜石市減塩取り組み強化期間」として、各種団体と連携し、集中的に啓発活動を実施するものと定めた。取り組みの詳細は下記のとおり。
市ホームページ等を活用した普及啓発
全世帯を対象に市ホームページや公式LINEページ、市広報誌、市内8地区公民館だより、こども園や学校給食センターの給食だよりに啓発記事を掲載し、家庭での減塩普及を推進する。
旗やリーフレット等を活用した普及啓発
ポスター・チラシ、脳卒中予防のぼり旗、脳卒中予防リーフレット等を用いた普及啓発活動を実施予定。ポスター・チラシ及びリーフレットについては市保健福祉センター及び市内8地区の市生活応援センターで掲示・配布をし、全世帯を対象に減塩を通じた健康意識の醸成を図る。
減塩普及啓発用チラシ
食生活改善推進員協議会※と協働した生活習慣病予防事業
就労者を対象に、主に就労場所を訪問し、食生活改善推進員協議会が作成したリーフレットに手作りのおかずを添えて配布し、適正体重の維持や減塩の大切さを伝え、生活習慣の見直しを推進する。
※市民のボランティアで構成されている。“私達の健康は私達の手で”をスローガンに、食を通した健康づくりの活動を進めている。
「減塩」に関する市民へのアンケート調査の実施
調査総数は408名。女性:316名(77.0%)、男性:73名(18.0%)、無回答:19名(5.0%)であり、うち、60代以上が323名(75.0%)を占めている。市民の減塩に関する行動変容の意識を探るため、令和1年12月から令和2年3月に実施。
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「12月~3月釜石市減塩取り組み強化期間を知っていますか。」
…「知っている」が約60%を占めている。 -
「釜石市は脳血管疾患死亡率が高いことを知っていますか。」
…「知っている」が70%を超えている。 -
「あなたは「減塩」を意識していますか。」
…「意識している」が80%を超えている。 -
「あなたが普段実践している取り組み」(複数回答)
…最も多い行動順
第1位:魚の「塩焼き」にさらに「しょうゆ」をかけない。(87%)
第2位:調味料は「かける」のではなく「つける」(74%)
第3位:しょうゆの代わりに「お酢」「こしょう」「ポン酢」を使っている。(69%)
第4位:刺し身は「わさび」を多めにして「しょうゆ」を控えている。(66%)
第5位:食卓に「しょうゆさし」を置かない。(60%)
※調味料に関する減塩の取り組みについては、上記の行動変容は概ね図られていると伺える。一方、「しょうゆさしをプッシュ式かスプレーにする」「納豆のたれを半分残す」「減塩しょうゆを使う」行動は40%程度に留まっており、これらの行動は若干ハードルが高いものと伺える。
日本の近代製鉄発祥の地、世界三大漁場のひとつ「三陸漁場」また、ラグビーワールドカップ2019の開催地であり、「鉄と魚とラグビーのまち」として有名な岩手県釜石市。釜石市のシンボルといえば、釡石港を見守るように立つ、高さ48.5mの「釡石大観音」。そんな釜石市では、強化期間を定めた減塩普及に取り組まれているようです。岩手県釜石市保健福祉部 健康推進課 管理栄養士 川崎さんに取材をしました。