茨城県ひたちなか市
若い世代へのアプローチ
減塩大作戦
全国に比べて高い
茨城県民の食塩摂取量は成人男性で11.4g/日、女性で9.7g/日と男女ともに国の目標量を上回っている1)。ひたちなか市で見てみると、急性心筋梗塞の標準化死亡比2)が男性で1.50、女性で1.90、くも膜下出血では男性が1.77と全国に比べても有意に高くなっている3)。
血圧は年をとってから急に上がるものではなく、長い間の食習慣が大きな影響を及ぼすと考え、若い世代から減塩への意識を高められるようにアプローチを行っている。
1)茨城県総合がん対策推進モニタリング調査(平成29年3月)
2)標準化死亡比:日本の都道府県比較の場合、基準となる集団の死亡率として通例全国値が用いられ、標準化死亡比が1より大きい都道府県は全国平均より死亡率が高く、1より小さい場合は全国平均より死亡率が低いことを意味する。標準化死亡比(SMR) = 観察集団の実際の死亡数/(基準となる集団の年齢階級別死亡率×観察集団の年齢階級別人口)の総和(国立がん研究センターホームページ参照)
3)令和2年度茨城県市町村健康指標
「うれ塩」を合言葉に
「うれ塩」とは、「減塩=美味しくない」ではなく、「美味しくてうれしい、身体にもうれしい塩」という意味を込めている。
体験を中心とした教室を開催
素材の味を生かした料理教室(おやこdeうれ塩クッキング、うれ塩カフェ)
食塩を使用しないラタトゥイユやドレッシングなどの料理教室を行う。
BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)や、尿中ナトリウム・クレアチニンの測定による食塩摂取量の推定をし、科学的データにより食習慣を知る
講話と料理教室を行ってきたうれ塩カフェですが、令和2年度から自分の食べ方を知ることが減塩のスタートと考え、BDHQと尿による食塩摂取量の測定を追加し、「うれ塩カフェ+」とした。BDHQにより食事のバランスが取れているか、何から食塩を多く摂っているのか詳細に解析し、個別に指導を行っている。
塩分濃度測定
食育教室を行った際には、汁物は必ず食塩濃度を測定し、0.6%までとしている。
ヘルス・ケア・センターへ自宅の味噌汁を持参していただき、塩分濃度測定を行っている。
減塩クイズ(各教室において)
食品や料理について、どちらに多く含まれているかを考えクイズを出題している。
味比べ
食育教室にて無塩パンと普通の食パン、だし汁、ドレッシングなどの食べ比べを行っている。カップラーメンの食塩濃度1.9%と同じ食塩水を飲んで、しょっぱさの体験も行っている。
企業と連携し、減塩商品の開発
味比べの教材となる「無塩食パン」と「普通の食パン」の製造可能な市内のパン屋を探し、特注で製造。食べ比べをすることで、食パンに含まれる食塩を感じることができる。またパンの製造を依頼した店舗では、無塩にすることで素材の味が生きることを実感し、週1回販売を続けてくれている。
パンに注目した理由
イギリスではパンに含まれる食塩量を20%減らしたことで、食塩摂取量が15%減り、心筋梗塞と脳卒中の死亡率を4割下げることに成功している4)。日本では食料に占める米とパンの比率は昭和55年には米が8.7%、パンが2.6%であったが、平成22年には米3.4%、パン3.4%と同等となり、米よりパンの消費傾向が強くなっている5)。加工品には食塩が多く含まれていますが、特に日々食すことの多い食パンに食塩が含まれていることを知らない方が多い為、食パンの食塩を比較体験してもらうこととした。
4)佐々木敏「佐々木敏のデータ栄養学のすすめ」
5)総務省統計局「家計調査通信447号(平成23年5月15日発行)」より
子供や若い世代に向けて、自宅でも実践してもらえるよう動画で簡単減塩料理の紹介を行なっている。
ひたちなか市HP「減塩おすすめレシピ」
https://www.city.hitachinaka.lg.jp/soshiki/6/2/4/2204.html
減塩への意識付け
体験教室などを通じて、若いうちから減塩に取り組まなければならないことに気付き、行動変容に繋がると考えている。
また、減塩に取り組んでいる店舗を紹介することで、減塩に気を付けた商品や飲食店が増え、自然と選択できる環境づくりを広げていきたい。そして、住むだけで健康になれる都市づくりを目指していく。
茨城県の中央部の海岸線に位置するひたちなか市は、土地柄農業も水産業も盛んで、特に特産物の干し芋は、日本の干し芋生産量の7割を占めています。最近では国営ひたち海浜公園のネモフィラも有名で、青い絨毯のように一面に広がったネモフィラに心を奪われた方も多いのではないでしょうか。そんなひたちなか市では、将来を見据えた減塩の取り組みをされていらっしゃいますので、ひたちなか市役所 福祉部 健康推進課 管理栄養士の髙野 佑子さんにお話を伺いました。