日本人の塩分摂取量と脳卒中
日本人と欧米人で病気になりやすさが異なることが知られています。例えば、同じ消化器のがんでも、欧米人が大腸がんになりやすいのに比べて、日本人では胃がんになりやすいことが知られています。同じ動脈硬化が進んで血管が詰まる病気でも、欧米人では心筋梗塞が多いのに比べ、日本人では脳卒中が多いことが分かっています。この日本人に多い脳卒中ですが、日本人の塩分摂取量が減るのに伴って減少してきたという歴史があります。
1952年に脳卒中は結核に代わり日本人の死亡原因の第1位となりました。脳卒中による死亡者数は1950年以降徐々に増えていましたが、1970年代初めから、急激に減り始めました。
脳卒中の罹患率は塩分摂取量の多い東北地方で高く、これは塩分摂取量と高血圧が関連していることを示唆していました。※1東北地方で極端に塩分摂取量が多かったのは、みそ汁と漬物の摂取に加え、主な調味料としてしょうゆを使用するという食生活のためであると考えられました。
1960年代に全国的な減塩運動が始まり、1950年代と1960年代初めまで報告されていた塩分の過剰摂取は、1970年代半ばから1980年代半ばにかけて減り始めました。日本人の塩分摂取量は1日当たり平均13.5グラムから12.1グラムに減り、同時期に東北地方では1日18グラムから14グラムへの減少を認めました。塩分摂取量が減るのと並行して、日本人全体の血圧の平均値も下がり、脳卒中関連の死亡率も大幅に低下しました。
これらのデータを見てみても、日本人において減塩が脳卒中のリスクを減らすと言えると思われます。日々の食生活が健康に与える影響はすぐに見えるものではないかもしれませんが、長期的には脳卒中のリスクを下げるなどの形で変化があるので、減塩をしている人はぜひがんばって継続して頂ければと思います。