みそとしょうゆ
日本食は一般的に健康的であるものの、精製された炭水化物(白米など)と塩分の摂取量が多いことがたまに傷であることは今までの記事でも説明してきました。そして、イギリスではパンなど加工食品に含まれる塩分含有量を、消費者が気づかないようにゆっくり時間をかけて減らすことで、味の変化に気づかれることなく国民の塩分摂取量を減らすことに成功したこともお伝えしました。しかし、日本人とイギリス人では塩分の摂取源が異なります。イギリス人は塩分の多くをパンなどから摂取しているのに対して、日本人は醤油、漬物、味噌などから摂取しているのです。
この中で、醤油や味噌はいわゆる大豆を発酵させて作られる日本古来の調味料です。そして、最近の研究では、普通の塩と比べて、醤油や味噌で味付けされた食事を摂取すると、血圧は上がりにくいと報告されています。実際にみそ汁の摂取で、夜間血圧が逆に下がるという研究結果もあります。
実は大豆を発酵させた食品には血圧を下げる効果があると言われています。醤油や味噌の場合、それに含まれる塩分自体は血圧上昇につながるものの、発酵された大豆が血圧を下げる効果があるため、これらが相殺されているのかもしれません。その結果として、他の食材で塩分を摂取するのに比べて、醤油や味噌で塩分摂取した場合には血圧への悪影響が少ない可能性が示唆されています。
日本で行われた研究において、女性においては、納豆などの大豆発酵食品の摂取量が多い人ほど脳卒中や心筋梗塞のリスクが低いと報告されています。一方で、男性においては、大豆発酵食品の摂取量と脳卒中や心筋梗塞のリスクと間に関係性は認めませんでした。また、男女の両方において、大豆発酵食品の摂取量のがんのリスクとの間にも関係は見られませんでした。
醤油や味噌が健康に良いのか、それとも悪いのかに関してはまだ結論が出ていないと言ってもいいでしょう。しかしながら、同じ塩分を摂取するのならば、塩よりは醤油や味噌の方がよさそうだということは言えそうです。醤油や味噌は日本食で多く使われる調味料ですので、その健康に対する影響に関するエビデンスが日本発で多く発信されることが期待されます。
*Anderson CA 他 J Am Diet Assoc 110:736-745,2010.より作成
Long-term intake of miso soup decreases nighttime blood pressure in subjects with high-normal blood pressure or stage I hypertension
Hiroaki Kondo, Hiroe Sakuyama Tomari, Shoko Yamakawa, Manabu Kitagawa, Minami Yamada, Seiki Itou, Tetsuro Yamamoto, Yoshio Uehara
Marukome Research & Developmentマルコメの研究開発
「味噌は血圧を上げる」のウソ味噌の血圧上昇抑制効果