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個人・集団への減塩アプローチ方法① | UCLA 津川友介先生
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減塩コラム

各先生に減塩に関するコラムを
執筆していただいています

個人・集団への減塩アプローチ方法①

日本人の塩分摂取量が欧米と比べても多いこと、そして塩分過多は高血圧を引き起こし、その結果として脳梗塞や心筋梗塞、腎臓病など複数の病気をもたらすことは前回までの記事で説明しました。

多くの人は、健康診断などで高血圧と診断されてから塩分摂取量を減らす努力をするようになるでしょう。しかしそれでは遅いのです。血圧は年齢とともに上がる傾向にあることが分かっています。そして血圧がある値を超えると「高血圧」と診断されるようになります。でもそうなる前に、普段の生活から塩分摂取量を制限しておいて、そもそも高血圧にならないようにするほうがよいことは明らかです。

第5次循環器疾患基礎調査

塩分摂取量を減らす方法にはいくつかありますが、大きく分けて①個人へのアプローチと、②集団へのアプローチがあります。個人へのアプローチとは、管理栄養士による栄養指導などを受けてもらい、普段の食事に含まれる塩分の量を減らしてもらう方法です。食事を作るときに塩、しょうゆ、みそなどの塩分の元になるものをどれくらい使っているか評価して、それを減らして薄味になれてもらうように指導します。


しかし一般的に、人間の味覚は濃い目の味の方がおいしく感じるようにできているため簡単ではありません。薄い味でも香りや辛味などをうまく利用すればおいしく感じられます。しかし薄味に慣れていっても、一度濃い味の食事をとってしまうと味覚(好み)が元通りになってしまうことがしばしばあります。自炊していない人では、そもそも塩分量のコントロールをすること自体が現実的ではないこともあります。外食や中食では、塩分控えめな食事を見つけることが難しいからです。


日本でも減塩商品が増えてきているので、これらを効果的に使うことで減塩に成功する人もいます(減塩醤油など一部の商品には塩分の代わりにカリウムが含まれています。腎不全の人はカリウムの摂りすぎは危険ですので、かかりつけの医師に相談してください)。また、自炊している人は、だしを強めに出したり、香辛料や香りをうまく使うことで、おいしく減塩することができます。


このように個人にアプローチして塩分摂取量を減らす努力をしてもらうのが個人へのアプローチだとすると、世の中にある食事の中に含まれる塩分量を減らすことで、気づかないうちに自然と塩分摂取量を減らしてもらうのが集団へのアプローチです。公衆衛生学的なアプローチとも言えます。


個人の健康を改善させることを目的とするのが医学だとすると、公衆衛生学とは集団の健康を改善させることを目的とした学問です。新型コロナウイルス感染症のような感染症のコントロールが公衆衛生学の大きな役割の一つですが、集団レベルで食事を改善させることで病気のリスクを減らすという試みも公衆衛生に含まれます。


個人ではなく集団にアプローチすることで、効果的に塩分摂取量を減らすことに成功した国にイギリスがあります。イギリスは、2003~2011年の8年間で、心筋梗塞と脳卒中の死亡者を約4割も減少させることに成功したと報告されています。次回は、イギリスがどのような政策をとることで、このように効果的に減塩に成功したのか見ていきたいと思います。