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妊娠中の女性にとって最適な食事(第4回)| カリフォルニア大学ロサンゼルス校 医学部 津川友介先生
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減塩コラム

各先生に減塩に関するコラムを
執筆していただいています

妊娠中の女性にとって最適な食事(第4回)

女性が妊娠すると最適な食事は変わってきます。胎児の体の組織(器官)が作られる大事な時期であるため、そのために十分な栄養を摂取しておく必要があるからです。 つまり、お母さんの健康と胎児の健康の両方を考えなくてはならなくなります。

ここでは特に健康上の問題の無い妊婦を想定しています。 もし何か病気を持っていたり、妊娠に関連する併存疾患がある場合(妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など)は、 かかりつけの産科の先生と食事に関してしっかりと相談してください。

4回にわたってご説明してきた、妊娠中の女性にとっての最適な食事も今回が最後です。 今回は、妊娠中の女性の体重増加に関してご説明したいと思います。

妊娠中の体重増加

日本では昔から「小さく生んで大きく育てよ」と言われてきました。 これは生まれたときの赤ちゃんの体重は軽い方がよく、その代わりに生まれた後で大きく育てるのがよい、ということを意味しています。 帝王切開の技術が十分に発展していなかった時代に、妊産婦が出産によって死亡するリスクを低下させるためにそのように言われてきたとされています。

日本ではこのような言い伝えや近年の女性の「やせ願望」も手伝って、世界でも低出生体重児が多い国なのであるだけでなく、 驚くべきことに低出生体重児の割合が年々増加しているのです。

低出生体重児比率の推移
(出典:OECDデータ2013)

数多くの研究によって、出生時体重が少ない方が、成績・学歴・収入・健康状態が悪いことが証明されています。 胎児がお母さんのお腹の中にいる時には十分な栄養が届いておらず、それに身体が慣れてしまい、生まれた後に十分な栄養を摂取した時に身体が順応できずに、 糖尿病などの生活習慣病になったり、心筋梗塞などのリスクが高くなってしまうのではないかと考えられています。

日本では産科医に体重増加が多いと、体重増を減らすように指導される妊婦もいると聞きます。 もちろん妊娠糖尿病などになってしまった妊婦は適切な血糖コントロールが必要になりますが、 それ以外の健康な妊婦であれば、日本の「妊婦の体重増加指導の目安」が世界水準と比べても厳しすぎる(低すぎる)という問題があります。 妊娠中に体重が増えすぎてしまうことのリスクだけでなく、体重の増えが少なすぎることのリスクもきちんと考慮する必要があります。

こういった問題を受けて、日本産科婦人科学会は2021年に「妊婦の体重増加指導の目安」を修正し、もともとやせているか標準体型の妊婦は、 これまでより体重を増やしても構わないという方向に修正されました。 下記の表を見て頂くと、それでもなお日本の基準は米国の基準よりも体重増加が少ないのが分かって頂けると思います。 米国は白人だけでなく日本人などのアジア人も含まれてこの基準です。エビデンスに基づいた明確なカットオフがあるわけではないので、 日米両方のガイドラインを基準するようにしてください。

日本 米国
妊娠中の体重増加

日本産科婦人科学会周産期委員会(2021年)※1

  1. BMI 18.5未満: 12~15kg
  2. BMI 18.5以上25.0未満: 10~13kg
  3. BMI 25.0以上30.0未満:7~10kg
  4. BMI 30.0以上:個別対応(上限5㎏までが目安)
  1. やせ(BMI<18.5):+12.5~18.0kg
    - 妊娠13週までで+0.5~2.0kg、それ以降は1週当たり+0.5kg
  2. 通常(BMI 18.5~24.9):+11.5~16.0kg
    - 妊娠13週までで+0.5~2.0kg、それ以降は1週あたり+0.5kg
  3. 過体重(BMI 25.0~29.9);+7.0~11.5kg
    - 妊娠13週まで+0.5~2.0kg、それ以降は1週あたり+0.25kg
  4. 肥満(BMI≧30):5.0~9.0kg
    - 妊娠13週まで+0.5~2.0kg、それ以降は1週あたり+0.25kg

参考文献