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サプリメントは健康によいのか?(第3回) | カリフォルニア大学ロサンゼルス校 医学部 津川友介先生
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減塩コラム

各先生に減塩に関するコラムを
執筆していただいています

サプリメントは健康によいのか?
(第3回)

前回は、サプリメントの中でも現在世界で最も活発に研究が行われている、オメガ-3脂肪酸とビタミンDのエビデンスに関してご説明しました。いずれも、多くの人にはメリットがないというのが現時点での結論であり、積極的に摂取を薦める内容ではありませんでした。有力な2つがメリットがあまりないということであれば、他のサプリメントはどうなのでしょうか?


ではどのようなサプリメントを取れば良いのでしょうか?アメリカ医師会の雑誌(JAMA Intern Med誌)に患者向けの説明文章※1があります。ここではそれを参考に、私が一部説明を加えたものをご紹介いたします。

サプリメントに関して知っておくべきこと

  1. サプリメントは健康に有害な成分を含むことがあり、薬や他のサプリメントと一緒に摂取すると健康に有害な作用を及ぼす可能性がある(アメリカでは年間23000人がサプリメントが原因と考えられる健康被害で救急外来を受診していると推計されている)。
  2. サプリメントに対する規制は弱く、その安全性や有効性に関する国の機関による評価はほとんどされていない。
  3. バランスの取れた食事によって健康を維持するのに必要なビタミンや栄養素は十分摂取できる。日本ではしばしばカルシウム不足が指摘されているが、上述のとおりサプリメントによるカルシウムの補充が骨折の予防になるというエビデンスは不十分である。

どのような場合にサプリメントの摂取を検討するべきか?

  1. 妊娠する計画がある場合、妊娠可能年齢の女性。
  2. 骨粗しょう症があり、食事によって十分量のビタミンDが摂取できない場合。
  3. 血液検査によってビタミンB12欠乏症、鉄欠乏性貧血、亜鉛不足による味覚障害などが指摘されており、医師からサプリメントが推奨されている場合。
  4. 消化器の病気を有していたり、減量目的で胃の手術を受けており、それに伴う栄養の吸収障害がある場合。胃切除すると鉄分やビタミンB12の吸収障害による貧血、カルシウム吸収障害による骨粗しょう症がしばしばおこる。その場合はサプリメントによる補充が推奨される。
妊婦

妊娠初期に葉酸の摂取量が少ないと、胎児の神経管閉鎖障害と呼ばれる先天性奇形のリスクが上がることが知られています。妊娠中には通常よりも多い葉酸が必要で、食事からの摂取だけでは不足する可能性があるため、葉酸のサプリメントによる補充が推奨されています。妊娠が成立する一か月前から摂取することが有効だとされており、妊娠が気付いたころには遅いため、妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠する可能性がある女性には葉酸のサプリメントは推奨されます。

サプリメント

また、妊娠24週から1日2.4グラムの魚油のサプリメント(EPAとDHA)を摂取することで、早産のリスクが減少※2し、生まれた子どもが3歳までに気管支喘息や気管支の感染症にかかるリスクが下がる※3というランダム化比較試験の結果もあります。魚油のサプリメントは副作用がほとんど無いとされているので、妊娠中の女性は摂取を検討してもよいと思われます。

例えば病院で鉄欠乏性貧血が指摘されており、鉄分のサプリメントを摂取するように指導されている人はその摂取は続けた方が良いでしょう。味覚障害があり、病院で亜鉛のサプリメントを試してもらうように言われ、それで症状が改善している人もいると思います。このように、病院で医師によってサプリメントを摂取することが推奨されている人は、食事だけでは何らかの栄養素が不足しているということであるので、きちんと飲み続けて頂きたいと思います。

まとめると、サプリメントを「なんとなく身体に良さそうだから」と摂取することはお薦めできません。健康上のメリットが無くてお金の無駄遣いなだけでなく、飲み合わせなどで健康被害を生じてしまう人たちもいるからです。その一方で、妊娠前の女性や病院で何らかの栄養不足を指摘された人のように、サプリメントが健康上有益であると考えられる人達もいます。自分がどのパターンに当てはまるかよく考えて頂き、賢くサプリメントを使いこなすことをお薦めします。

参考文献