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減塩コラム

各先生に減塩に関するコラムを
執筆していただいています

自己紹介

はじめまして。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の津川友介と申します。元々は日本の聖路加国際病院で腎臓内科として患者さんの診療にあたっていましたが、2010年に渡米して、今ではUCLAで研究と教育をしています。健康的な食事に関する本も執筆させて頂いており、おかげさまで多くの方に読んで頂いています。

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腎臓内科として日本で勤務していた頃から、塩分を減らすことの重要性を感じていました。日本人の塩分摂取量が、世界保健機構(WHO)で推奨されている1日6グラムよりもずっと多いことは森先生の記事でも紹介されていますが、日本人の塩分摂取量が欧米人と比べて多いことは意外と知られていません。

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出典:Powles et al.(2013) を元に筆者作成。2010年のデータ。 [※1]

ピザやハンバーガーを食べていて、不健康な食事をしているイメージのあるアメリカよりも、塩分摂取量においては日本の方が多いというのは驚きです。日本だけでなく、韓国や中国も塩分摂取量が多いことを考えると、東洋の食事は一般的に塩分が多く含まれているということを示唆しています。

もちろん身体に悪いバターなどの飽和脂肪酸の量が少ないという点では、日本食は健康に良い優れた食事です。しかしながら、塩分摂取量と炭水化物(特に白米などの精製された炭水化物)の量が多いという点では、まだまだ改善の余地があるというのも事実です。

塩分の摂取量が多くなると血圧が高くなります。少量の塩分であれば腎臓から尿中に排泄されるのですが、塩分摂取量が多くなると体内に蓄積されるようになります。血液中の塩分の量が多くなると、血液の浸透圧が高くなります。脳は血液の浸透圧に非常に敏感なので(脱水にならないようにするための機序だと考えられています)、そうなると「のどが渇いているので水を飲むように」という指令をだします。そうして水を飲むと、塩分と水が血液の中にとどまり、身体を循環する血液の量が多くなります。

ホースで水を出しているときに、蛇口をひねって出る水の量を増やすとホースにかかる圧は高くなります。ホースを血管、水を血液だと考えると、同じことが人間の身体でも起きており、循環している血液の量が増えると、血管にかかる圧が高くなります。短時間だけだったら問題ないかもしれませんが、それが長時間つづくと血管壁がダメージを受けて、動脈硬化を起こします(正確にはもう少し複雑な機序ですが、ここでは単純化して説明しています)。

動脈硬化が脳の血管を詰まらせると脳梗塞、心臓の血管を詰まらせると心筋梗塞を引き起こします。ちなみに、同じ動脈硬化でもどの血管が詰まりやすいかは国によって違いがあることが分かっています。日本人には脳梗塞が多いのに対して、欧米人では心筋梗塞が多いことが知られています。

塩分が健康に悪影響をおよぼすのを軽減するには2つの方法があります。一つ目は、塩分摂取量を減らすことです。もう一つは、カリウムの摂取量を増やすことです。

塩分とカリウムは逆の働きをすると考えられています。塩分が血圧をあげるのに対して、カリウムは腎臓から尿中への塩分の排泄を促進することで、血圧を下げる効果があると考えられています。実際に、塩分と比べてカリウムの摂取量が多い人ほど、心筋梗塞や脳梗塞など血管が詰まる病気で亡くなるリスクが低くなることが過去の研究 [※2]で報告されています。カリウムや野菜や果物に多く含まれています。

カリウムを取りすぎてはいけない人たちがいることに注意してください。それは、慢性腎臓病(昔は慢性腎不全と呼ばれていました)など腎臓の機能が悪い人です。カリウムは腎臓から排泄されるのですが、腎臓の機能が落ちている人は、カリウムを取りすぎると体中に蓄積してしまい、血液中のカリウム濃度が高くなってしまいます。血液中のカリウムが高くなると、心室細動という名前の不整脈を起こしてしまいます。この心室細動が起こると心臓から血液が一切送り出されなくなる、文字通り致死的な不整脈です。健康診断や医療機関において、腎臓が悪いと言われたことがある方は、カリウムを摂取してもいいか医師に確認するようにしてください。

※1 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24366578

※2 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21747015