喫煙習慣と塩分
タバコと味覚について
無理なく減塩するためには味覚を正常に保つことも大切です。今回は、タバコと味覚について説明します。
タバコは百害あって一利なし
ご存知のとおり、タバコは百害あって一利なしです。 肺がん等、がんの危険因子であるだけでなく、高血圧や腎硬化症、循環器疾患の危険因子でもあります。 さらに、本人だけでなく、タバコを吸っている人の周りの人にも悪影響があります。 副流煙に含まれるニコチンやタールは本人が吸っている量よりも多いことが知られています。
タバコと味覚
タバコによる味覚への影響はさまざまな研究がなされています。北海道の定期住民健康診断に参加した者(905名)を対象とした研究において、
甘味、塩味、酸味、苦味の味覚検査を行い、喫煙量が多いほど味覚閾値が鈍化すると報告されています(1)。
また、インドでの噛みタバコの味覚への影響について調査した研究において、
噛みタバコ咀嚼者は非咀嚼者より塩味の味覚識別時間に有意な増加が認められたと報告しています(2)。
さらに、別の研究では、18〜64歳を対象にした調査で、ニコチン依存度が高いほど味覚感度が低かったこと、禁煙すると味覚感度が回復することを報告しています(3)。
このようにタバコによる味覚が鈍感になることは各種研究からも明らかです。
味覚が鈍感になることで、塩味がわかりにくくなり、塩分の多い食事をとってしまうことに繋がることが考えられます。
味覚を正常に保つためには、禁煙した方が良いでしょう。
味覚と塩分摂取量は関連がある
食塩摂取の習慣は後天的な食生活が影響していると考えられており、その過程で塩味の味覚が形成される可能性があります。
実際に、塩味の味覚は食塩摂取量に寄与する因子であると報告されており(4)、塩味の味覚と自己申告による食塩摂取量には正の相関があり、
高血圧患者は健常人と比較して、塩味味覚閾値が高い(塩味が感じにくい)と報告されています(5)。
禁煙して、おいしく減塩
タバコは味覚にも影響があることについて説明しました。禁煙することで味覚が回復されるという報告もあります。
仮に味覚が鈍感である場合、減塩した料理をおいしく感じないかもしれません。
しかし、禁煙して味覚が回復すれば、 おいしく感じられるかもしれません。
ぜひ、この機会にご自身の喫煙習慣について見直してみてください。
1人での禁煙が難しい場合は、禁煙外来などを利用すると良いでしょう。
- (1)蓑原美奈恵, 伊藤宜則, 大谷元彦, 佐々木隆一郎, 青木國雄, 健常成人の味覚識別能に関する研究 喫煙との関連性について, 日本衛生学雑誌, 1988,43(2):607-615. Japanese. doi: 10.1265/jjh.43.607.
- (2)Kale YS, Vibhute N, Belgaumi U, Kadashetti V, Bommanavar S, Kamate W. Effect of using tobacco on taste perception. J Family Med Prim Care. 2019 Aug 28;8(8):2699-2702.
- (3)Chéruel F, Jarlier M, Sancho-Garnier H. Effect of cigarette smoke on gustatory sensitivity, evaluation of the deficit and of the recovery time-course after smoking cessation. Tob Induc Dis. 2017 Feb 28;15:15.
- (4)Mattes RD. The taste for salt in humans. Am J Clin Nutr. 1997 Feb;65(2 Suppl):692S-697S.
- (5)Piovesana Pde M, Sampaio Kde L, Gallani MC. Association between Taste Sensitivity and Self-Reported and Objective Measures of Salt Intake among Hypertensive and Normotensive Individuals. ISRN Nutr. 2012 Oct 24;2013:301213.