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「美味しさ」を見つける その① ~自分に合った減塩方法を探す~
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減塩コラム

各先生に減塩に関するコラムを
執筆していただいています

「美味しさ」を見つける その①
 〜自分に合った減塩方法を探す〜

“Life expectancy would grow by leaps and bounds
if green vegetables smelled as good as bacon.”

Doug Larson ( U.S. columnist )

「もし緑の野菜がベーコンと同じ匂いだったら、人の平均寿命は飛躍的に伸びるだろう。」

ダグ・ラーソン(アメリカのコラムニスト)


前回のコラムでは、減塩のための「食べる時の工夫」と「料理の工夫」についてお話ししました。ポイントは「美味しく減塩」することでしたね。食事は人生の楽しみの1つです。いくら身体の健康によくても「美味しくない」食事をむやみに続けるのは苦痛ですし、精神的にはむしろ不健康なことかもしれません。

この点は皆さんもおそらく納得して下さるのではないかと思いますが、そこで1つ疑問が浮かびます。「美味しい」というのは何をもって「美味しい」と言えるのでしょうか。もし人によって「美味しさ」が異なれば、「美味しい減塩」の内容や方法も異なるはずです。そこで今回「美味しく減塩」するために、「美味しさ」そのものについて皆さんと考えてみたいと思います。

食事

「美味しさ」は舌や口の中で「味覚」として感じていると考えられがちですが、実際はそうではありません。香り、見た目、音、口当たり、すなわち「嗅覚」「視覚」「聴覚」「触覚」と、「味覚」とを合わせて、五感で「美味しさ」を感じています。これらの情報が統合されるのは「脳」です。つまり、われわれは「脳で美味しさを感じている」ということになります。

このように考えると「美味しさ」は生物として高度に進化した感覚と言えますが、「美味しさ」はヒトにとって本来どんな意味があるのでしょうか。ヒトは食べ続けなければ、すなわち栄養を取り続けなければ、生存することはできません。食べることが苦痛であれば生物は滅んでしまいますので、食べることに心地よさや喜びを感じるようになっています。

一方で、狩猟採集が中心であった時代には、当然のことながら食料品がお店で手に入るわけではありませんので、目の前にあるものが食べられるか、食べられないかを自ら判断しなくてはなりませんでした。もし毒なら命に関わりますので、口の中に食物を入れるには相当の覚悟がいります。

つまり「美味しさ」とは生死に関わる極めて重要な感覚だったのです。しかし現代では生活が豊かになり食糧も簡単に手に入るようになりました。この飽食の時代では、生存のための「美味しさ」の感覚が麻痺してしまい、塩分やカロリーを過剰に摂取することで、むしろ健康を損なうリスクにもなっています。

脳

塩分をつい多く摂ってしまうのは、その方が美味しいからですが、「美味しさ」を感じること自体を否定的に考えると減塩はうまくいきません。生理的な「美味しさ」は本来肯定的に受け入れてよいもののはずです。そこで見方を変えてみましょう。塩分をつい多く摂ってしまうのは「塩分以外の美味しさが足りないから」と考えてみてはいかがでしょうか。塩分をたくさん使わなければ美味しくないという理由で塩分をたくさん使っているのだとしたら、減塩すれば美味しくなくなるのは当然です。それでは健康にいいからといっても、なかなか長続きしません。

減塩を効果的に続ける秘訣は、塩分を減らすこと自体に意識を向けることではなく、塩分を多く使わなくても食事が美味しくなるようにすること、すなわち「美味しいから塩分をたくさん使う必要がない」状態にすることです。私は医師として多くの患者さんに減塩指導を行っていますが、実際に減塩を上手に継続できている方は、減塩をしても美味しい食事を楽しんでいる印象を受けます(減塩できている方は同時に、食事が美味しいからか、食欲がありすぎて困るという方も多い気がします!)。

美味しく減塩するためには、塩味以外の美味しさを知り、自分にとって健康的な「美味しさ」を見つけなければなりません。おそらく人によって美味しさは異なりますが、ヒトが「美味しさ」を感じる仕組みを知っておくことは、自分にとっての美味しさを見つけるのに役立つのではないのでしょうか。「美味しさ」を感じるメカニズムは複雑で不明な点も多くありますが、それでも現在までにいろいろなことがわかっています。

食塩

そこで今回のシリーズでは、我々の感覚(味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)がどのように「美味しさ」に関わっているのか、そのメカニズムを一緒に学び、自分に合った「美味しい減塩」の方法を見つけていきましょう。まずは五感の中でも食事の中心となる「味覚」と「美味しさ」について、次回お話しします。お楽しみに!


文献・出典

Chandras Pandurangan M, Hwang I. Systematic mechanism of taste, flavor and palatability in brain. Appl Biochem Biotechnol. 2015;175:3133-47. PMID: 25733187