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「情報による美味しさ」 その③
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減塩コラム

各先生に減塩に関するコラムを
執筆していただいています

「情報による美味しさ」 その③

今回は、食事に関する「文字情報」と、食事を摂取する「環境情報」が、それぞれ「美味しさ」に与える影響について、お話しします。


食べ物については、その名前によっても美味しく感じることが知られています。ある研究では、同じ料理を提供する際に、通常の名前で提供した場合と、美味しそうな名前で提供した場合を比べて、美味しさがどのように変わるかを評価しました。

例えば、「シーフード・フィレ」や「レッドビーンズ ライス添え」といった通常の料理名をそれぞれ「ジューシーなイタリアンシーフード・フィレ」や「トラディショナル・ケイジャン・レッドビーンズ ライス添え」と魅力的な名前にしたり、また「チキン・パルメザン」や「ズッキーニクッキー」を「ホームスタイル・チキン・パルメザン」や「おばあちゃんのズッキーニクッキー」と親しみやすい名前にしてみたり、料理名に工夫を凝らしました。

その結果、名前を工夫した料理の方が美味しく感じたのです!そして名前を工夫した料理は味が美味しいだけでなく、料理の見た目もよく感じたそうです。

メニュー

これは料理の名前が、食材や料理そのものとは別に、味覚や視覚に影響していることを示しています。この研究結果から推察すると、普段食べ慣れない料理を提供する際に、料理名を工夫するとより受け入れられやすい可能性があります。これは減量や減塩のメニューにも応用できそうですね。「ボリュームたっぷりダイエットハンバーグ」や「こくうま減塩カレー」などはいかがでしょうか?


また、料理を食べる場所も、料理の美味しさに影響することが知られています。これも食べ物以外の重要な「情報」の1つです。

レストラン

ある研究では、全く同じ料理をレストランあるいは学生食堂で提供して比べてみたところ、レストランでの食事の方が美味しく感じたそうです!この研究はイギリスとアメリカで行われましたが、ともに同じ結果となりました。食材や料理そのもの以外の情報である食事環境が、料理の美味しさに関わっているとは、とても興味深いですね。

また別の研究で、テーブルや食器といったテーブルウェアも料理の美味しさと影響していることが知られています。しかし、高級感のあるテーブルウェアを用いても、レストラン以外の場所では美味しさへの効果は乏しいようで、それだけ料理を食べる場所の影響が大きいことが分かりますね。

テーブルウェア

「美味しさ」は「味覚」だけでなく「嗅覚」「視覚」「聴覚」「触覚」と合わせて五感で感じていますが、これらの情報が統合されるのは「脳」であり、われわれは「脳で美味しさを感じている」ということを以前にお話ししました。

これをさらに細かく見てみると、料理を食べた時の五感の刺激は、「大脳皮質」の「感覚野(味覚野・嗅覚野・視覚野・聴覚野・体性感覚野)」に伝わり、大脳皮質の「前頭前野(前頭連合野)」で1つの情報となります。前頭前野は脳内で最も高度な情報処理を行っている部位ですが、前々回にお話ししたマクドナルドのフライドポテトを例にとると、フライドポテトの味や香り、見た目、噛んだ時の音や食感といった感覚としての情報がこの領域で統合されて、フライドポテトのイメージが出来上がるのです。

そしてこれらの情報は同時に「大脳辺縁系」にある「扁桃体」や「海馬」にも伝わり情報が追加されます。大脳辺縁系は「快・不快」といった情動や記憶にも関与していて、マクドナルドの好ましい(あるいは好ましくない)イメージや、過去の美味しかった(あるいは美味しくなかった)マクドナルドのフライドポテトの記憶が追加され、最終的に「美味しさ」を判断するのです。

脳

このように考えると「美味しさ」は生物として高度に進化した感覚と言えるでしょう。食の情報が氾濫している現代においては、美味しさの判断が外部の情報にも大きく左右されていることを認識して、改めて自分の食生活を考えてみることが大切ですね。


このコラムでは「美味しい減塩」をテーマに、減塩のための「料理の工夫」や「食べる時の工夫」だけでなく、塩味以外の美味しさについて、いろいろな角度から見てきました。味覚だけでなく五感としての美味しさや、情報としての美味しさについて、参考になったでしょうか。これからも、皆さんが御自分のライフスタイルに合わせて美味しく減塩するために、少しでもお役に立てれば幸いです。それでは、またお会いしましょう!


文献・出典

Brian Wansink, Koertvan Ittersum, James E Painter. How descriptive food names bias sensory perceptions in restaurants. Food Quality and Preference July 2005, 16:393-400.

Meiselman HL, Johnson JL, Reeve W, Crouch JE. Demonstrations of the influence of the eating environment on food acceptance. Appetite. 2000 Dec;35(3):231-7. PMID: 11073705